うちは息子、3人である 一番上の息子の名前は慎一郎という

2人目は「悠」、三人目は「郎」という つまり1、2、3です

僕が、見習いで働いている時は.給料の手取りは多分5.6万だったと思う(20年前)
その頃住んでたのは、『○○荘』←アパートやハイツましてやマンションなんかじゃない
昔の部長刑事などのドラマに出て来るようなオンボロの、お風呂もないような所ね
ドア開けたら、いきなり部屋って感じの

その、同じ○○荘に住んでる散髪屋の見習いの男と友達になった
その男が慎一郎という名前であった
どういう男だったかというと、給料日に『俺、寿司喰って来るわ!』と言って
5.6万の給料なのに、1人で寿司屋に3万も払って
帰りにバイクのプラモデルを1万円分ぐらい買って帰って来る男だった
僕はというと5.6万の給料で車のローンに3万、家賃が1万という感じの生活
当然、車は ガソリン代がないから動かない

給料日の3日後からは2人で御飯(米は実家から送ってくれた感謝)に
『あじ塩』を掛けて食べていた たまに『マヨネーズ』などかけられたら洋食の御馳走だった
飲み物は『水』、冷蔵庫に入っているのは『水を入れたヤカン』だけである

そのころ僕らは自分らが『貧乏』である事さえも気付いていなかった
『明日は何か食べられるか』ではなく『今食べてしまえ』という生活
ある意味、お金があっても『明日はどうなるか』などと考えて暮らしている人
よりは、裕福な気持ちで暮らしていました

僕は、その頃から今の嫁さんとつき合っていた訳なのですが
ある日、慎一郎が

慎一郎)『俺、女の子と知り合ったからその子の友達とお前の4人で遊びに行こう!』
僕)  『あかんわ、月曜日はさゆりと約束してるから』
慎一郎)『そんなん、何か嘘付いて断れよ!可愛い子やぞ〜』
僕)  『解った、講習に行くとでも言うて断るわ』

それからも、僕は20年以上 同じ失敗をくり返すのであった
いまだにうちの嫁さんより可愛い奴にはお目に掛った事がない

そうして4人で遊んで(どうしてもその可愛い子の顔が思い出せない..)
僕の部屋に、慎一郎と2人で帰って来たら
合鍵を持っていた さゆりが、夕御飯を作ってくれていた

手紙に『講習、御苦労さま サラダは冷蔵庫にあります おやすみなさい』

慎一郎)『お.お.お前 何してるんや!』
僕)  『何って お前が誘ったんやで』
慎一郎)『だから、何んでこんないい子が居るのに来るんや〜!』
僕)  『何んで、お前が嘘でも付けて.....』

  バカヤロー〜! バコ〜ン! 

僕)『何すんねん おま...』

   バコ〜ン!

慎一郎)『車乗れ! 今からさゆりさんに謝りに行く!』

僕)  『何も今 行かんでもいいやん もう夜中や..』
     バコ〜ン!

さゆりが住み込みで、働いてた店まで行って

慎一郎)『俺が誘ったんや すまん』
僕)  『僕は誘われただけなんや..』

    バコ〜ン!

慎一郎)『ちやんと謝れ!』
僕)  『ごめん二度とこんな事しません

   その後も『こんな事』は今まで20年延々とくり返されている

その帰り さゆりが缶ジュースを2人に1本ずつ、くれた
『うまい..』一口飲んで後は冷蔵庫に、しまいました
そう、僕と、慎一郎は何ヶ月ぶりにジュースを飲んだのであった

慎一郎みたいな子になって欲しい
『子供の名前、慎一郎にするわ』
妻も、大賛成してくれて
何年かぶりに、慎一郎に電話した

僕)『子供産まれるんやけど慎一郎て名前貰うわ』
慎一郎)『いいよ〜 使って、ちょう〜』

その頃まだ、慎一郎は独身で僕の嫁さんの、妹を紹介しょうかと..思い

僕)   『お前今、何処の散髪屋で働いてるん?』
慎一郎) 『俺? もう辞めたよ かったるいから、今、高速道路の掃除してるのよね』
僕)   『そうか手取り 幾らある 貯金いくらしてる?』
慎一郎) 『何聞いてるんよ貯金なんてする訳ないじゃん』

たしかに僕はおかしな事を聞いている..
こいつは 貯金なんてする人間ではないのである..

慎一郎はいい奴である 息子もこんな男になって欲しい
でも、慎一郎は生活能力がないから、妹は...紹介出来ない..

慎一郎)『何んで そんな(どうでもいい)事 聞くの?』
僕)  『いや、なん..でもない』
慎一郎)『ふ〜ん』

あの『貧乏な暮らし』を、してた頃より

気持ちが『貧乏人』になって、しまっている自分が

恥ずかしくなって電話を切った

数年後、慎一郎が仕事中に 事故で死んだと連絡があった

今 息子は順調に、『今食べてしまえ』と『慎一郎化』している

たぶん、『あいつ』が 見守ってくれてるん やと思う

過去を悔まず、明日の事など心配せずに 『今を生きろよ!』

それが、お父さんの、なって欲しい男の姿だぜ  慎一郎!